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同音異義(アフター)
作:高居空


「フケイは許しません!」
  目の前に立つ褐色の肌の女性は、可愛らしさの残る顔立ちに似合わぬ強い口調で言い放った。
「婦警は許さない……?」
  どういうことだ? この女性、一見まともそうに見えるが、実は属性が「混沌・悪」で、国家権力を憎悪しているタイプなのか? それとも……
「その格好のまま街に出て、婦警のお世話になったことがある、とか……?」
  そう、彼女は街中を歩くのには相当際どい衣装を纏っていた。胸と下腹部の大事な部分をかろうじて隠すだけの布地。褐色の肌はそのほとんどが露わとなっており、美しい体のラインも白日の下に晒されている。男なら目のやり場に困ること請け合いというやつだ。かくいうオレも、元の姿なら下半身が反応してしまったかもしれない。
「でも、オレはオンナだけど婦警じゃないぞ?」
  見れば分かるとは思うのだが、念のため言葉にして伝えるオレ。
  今のオレは、祭神の呪いというやつで女へと姿を変えられてしまっていた。しかも、オレをこんな姿に変えた祭神の巫女の執拗な責めによって、色々と開発されまくってしまっているときている。だからといって、まだコスチュームプレイには手を出してはいないのだが……。
「ちょ、違います、ご主人様! 彼女の言っているフケイというのは、“女性の警官”ではなくて、“無礼”と同じような意味の方のフケイ(不敬)です! というか、さすがにわざと間違って解釈しようとしてませんか!?」
  隣で、俺のサポートをしてくれているパートナーの少女が、あわあわと訂正してくる。
  そして目の前では、褐色の肌の女性が、肩を震わせながら顔を真っ赤にし、眉を吊り上げていた。
「不敬! 不敬ですよ!!」
  その声と同時に女性の周りから膨大な魔力が立ち上り、虚空から円形の鏡が出現する。
「ひゃあ! やっぱり怒ってますよご主人様! 魔力急速充填からの必殺攻撃、来ちゃいます〜!」
「く……っ!」
  パートナーの警告の声に、オレはしまったとばかりに口を歪ませ……
  内心、計算通りとほくそ笑んでいた。

  オレは、祭神の巫女によってさんざん開発されまくってしまっている。そしてその結果……
  イタイのがキモチよくなってしまったのだ。

  有り体に言ってしまえば、オレは、ダメージを受けるたびに快感を感じてしまう体になっていた。それも今では生半可な刺激では物足りなくなってしまっているときている。体の芯まで燃え上がらせるのには、やっぱり一発で体力の大半を消し飛ばすような必殺攻撃でなければ……。それも多段ヒットなら言うことなしだ。
  例えその攻撃で体力が0になってしまってもそれはそれ。むしろその方が「くっ……、コロせ……」からのおかわりが入るので、快感倍増というか……。
  そんなことを考えながら、相手の攻撃を全身で受け止めるべく構えを取るオレ。その耳に、隣で防御姿勢を整えたパートナーの声が響く。
「来ます、ご主人様! 彼女の必殺攻撃、『ダメージ計算の前に即死判定を行う、高確率の即死攻撃』です!」
「…………へ?」
  その言葉が意味することを理解するより前に、鏡から湧き出た青い亡霊の群れがオレの視界を埋め尽くし……。



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